ストレンジシチュエーション法

ストレンジシチュエーション法

ストレンジシチュエーション法の定義

ストレンジシチュエーション法とは、愛着理論に基づき、エインズワース,M.D.S.らによって開発された、乳児と親などの養育者とのアタッチメントの発達やその類型を明らかにするための実験観察法です。

手続きとしては、まず、見知らぬ場所である実験観察室やプレイルームなどに、母親と子どもが入室します。
そして、母親は椅子に座り、子どもにはおもちゃなどで自由に遊ばせます。
そのうち、見知らぬ人が部屋に入ってきて椅子に座ります。

その後、母親は部屋を出て、見知らぬ人は子どもに話しかけたりします。
しばらくして母親が部屋に戻ると、見知らぬ人は退室します。

次に、母親も退室して、子どもは一人で部屋に残されます。
それから、見知らぬ人が入室して、子どもをあやします。
最後に、母親も入室して、見知らぬ人は退室します。

この手続の中で、母親と子どもが分離する場面と、再開する場面が2回ずつ設定されています。
母子分離と母子再開を含む場面で、子どもがどのような反応をするかを観察しておきます。

 
結果をもとに、子どもの反応は、
「安定型(B型)」「回避型(A型)」「葛藤型(C型)」
の3つに分類されます。

安定型の子どもは、母親への信頼感を内包する行動をとるなど、安定した適切なアタッチメントの発達を示しますが、回避型と葛藤型の子どもは共に、アタッチメントが希薄であったり、母親に対する矛盾した反応を示したりする傾向があります。

ストレンジシチュエーション法の関連キーワード

  1. エインズワース,M.D.S.
  2. アタッチメント
  3. 安定型
  4. 回避型
  5. 葛藤型(アンビバレント型)
  6. 安全基地

ストレンジシチュエーション法の補足ポイント

ストレンジシチュエーション法における3つの型について、もう少し詳しくみていきましょう。

見知らぬ場所でも、親がいれば安心して遊び、見知らぬ人が入ってきて親が退出した時には不安を示しますが、親が戻ってくるとすぐにまた安心して、再び積極的に遊び出すという行動をとれば、安定型とされます。

これは、基本的な信頼感があるためです。
この信頼感があると、母親が必ずしもいつもそばにいなくても安全だと感じることができ、母親を安全基地として使用しながら探索活動に熱中できるようになるのです。

 
それに対し、見知らぬ場所に連れて来られた時も、親が出て行った時も、親が戻ってきた時も、常に1人で遊び、親に対して愛着行動をあまり示さないタイプを回避型といいます。

 
そして、親と一緒にいるときは安心して遊んでいても、親が出て行くと不安や恐怖を顕著に示し、戻ってきた親に対して接触を求めるだけではなく敵意や攻撃も示すタイプを葛藤型、もしくはアンビバレント型と言います。
これは、子どもが母親に対し、十分な信頼感を持てずにいることを示しています。

 
回避型や葛藤型の反応は、母親の子どもへの接触の仕方、つまり愛着の形成のあり方によって異なると考えられます。

回避型の母親の特徴として、子どもとの身体的接触に強い嫌悪感を示しがちであるという点が挙げられるでしょう。
子どもを抱きしめたり、愛情を表現したりすることが少なく、拒否的な態度が目立つ傾向があると言えます。

 
また、葛藤型の母親は、子どもとの身体的接触に嫌悪感を示すことは少ないものの、乳児の発するシグナルに鈍感で、意図せず子どもの行動を妨害したり、無視したりすることが多いとされています。

ただし、これらのタイプごとの比率は文化圏によって異なることが示されており、子どもの反応の違いは文化的影響も大きいことが示唆されています。

MEMO

ストレンジシチュエーション法が開発された当初は、A型~C型の3タイプが想定されていましたが、後に無秩序・無方向型と呼ばれるDタイプの存在も指摘されました。

Dタイプの子どもは、他の3つのタイプに見られるような反応の一貫性がないことが特徴です。
Dタイプの子どもの養育者は、その人自身が未解決の葛藤を抱えていることが多く、養育者との関わりの中で、子どもが安心感を抱きづらいと言われています。
また、不適切な養育をしていたり、虐待の兆候が見られるのもこのDタイプが多いとされています。