脱中心化の定義
ピアジェ,J.の認知発達段階における前操作期から具体的操作期への移行段階で生じる、自己中心的な思考から脱する過程を脱中心化といいます。
前操作期の大きな特徴の1つに自己中心性があります。
自己中心性とは、自分にしか通用しない特殊な象徴化パターンにより、すべてのものを把握、表現しようとしたり、自分が得た知覚情報のみですべての状況を認知、理解、判断し、他者の視点や立場にたって考えられないという、この時期の幼児の特徴的な思考です。
具体的操作期に入ると、この自己中心性から脱して、さまざまな知覚情報を組み合わせることができ、より抽象的で一般的な象徴化が可能となります。
さらに、具体的な体験を通して、保存の概念や、自分の観点と他者の観点が異なることを理解するようになり、他者の観点からも物事を客観的に見られるようになるのです。
脱中心化の関連キーワード
- ピアジェ,J.
- 自己中心性(自己中心的思考)
- 前操作期
- 具体的操作期
脱中心化の補足ポイント
ピアジェの認知発達段階は心理系大学院の入試や心理系の検定試験で頻出のテーマです。
脱中心化の説明では、前操作期と具体的操作期について触れましたが、それぞれの発達段階の特徴と流れを確認しておきましょう。
感覚運動期(0~2歳頃)は、視覚、聴覚、味覚といった感覚情報と、対象物をつかんだり投げたりといった運動情報、さらに感覚器官と運動器官を協応させて収集した情報により、対象を認知する時期です。
対象物の永続性が獲得されるのもこの時期の特徴です。
前操作期(2~7歳頃)は、自己中心性、アニミズムや人工論、相貌的知覚といった特徴を示します。
象徴的な記号を用いて対象を理解、表現できるようになるものの、あくまでもそれは独自の主観的で特殊なもので、客観的操作を用いて抽象的に理解することはできません。
また、対象の認知は直観的情報に左右されるため、質量保存の法則に代表されるような保存の概念や、3つ山課題に代表される他者視点の理解は困難です。
具体的操作期(7~11歳頃)は、自己中心性から脱却するのが大きな特徴です。
つまり、一般性の高い抽象概念も理解できるようになり、他者の視点からも認知、理解が可能になります。
形式的操作期(12~16歳頃)になると、抽象的・論理的な思考様式が拡大され、具体的な体験がなくても頭の中で操作を加えることが可能となり、仮説演繹的思考や組み合わせ思考といった抽象的思考が可能となります。
7歳から12歳ごろになると、子どもは自己中心性から脱し始め、自己視点と他者視点を徐々に区別できるようになっていきます。
他者は自分と違う視点を持っていることを理解することを視点取得と言います。
視点取得には、自分と異なる位置にいる他者からのものの見え方に関する視覚的視点取得の他、表情などから他者の感情を察する感情的視点取得、他者の立場に立って相手の理解を推測するといった認知的視点取得があります。