内的作業モデルの定義
内的作業モデルとは、主に愛着理論において用いられる概念で、他者や自己に関する認知的・感情的な枠組みのことを指します。
特に乳幼児期に主要な養育者との関係の中で形成される、「自分はどのような存在か」「他者は信頼できる存在か」「自分と他者との関係はどのようなものか」といった基本的な対人関係のイメージが、後の対人行動や情動調整、社会的適応などに影響を与えるとされています。
このモデルは固定的なものではなく、経験を通して変化する可塑性を持っているとされていますが、幼少期に繰り返し経験された人間関係のパターンは、成人期の人間関係や愛着スタイルにおいても強く影響を及ぼす傾向があります。
内的作業モデルの関連キーワード
- 愛着理論
- 対人関係
- 情動調整
- 可塑性
- 愛着スタイル
- 自己イメージ
- 他者イメージ
- 再体験
内的作業モデルの補足ポイント
ボウルビィ, J.によって提唱された愛着理論の中核概念である内的作業モデルは、乳児が特定の養育者との間で築いた愛着体験をもとに、世界をどのように認識するかという「心の地図」のような役割を果たします。
例えば、一貫して応答的な養育を受けた子どもは、「自分は愛される存在である」「困ったときには他者が助けてくれる」といったポジティブな自己イメージ・他者イメージを形成しやすく、安定した愛着スタイル(安定型)を持ちやすくなります。
一方、拒否的・不安定な養育を受けた場合には、「自分は価値のない存在」「他者は頼りにならない」といった否定的な内的作業モデルを持ち、回避型・不安型・無秩序型といった不安定な愛着スタイルを形成しやすくなります。
こうした乳児と親などの養育者との愛着スタイルやその類型については、ストレンジシチュエーション法を用いて観察されます。
このようにして形成された内的作業モデルは、大人になってからの恋愛関係や職場の人間関係など、さまざまな対人場面での思考・感情・行動の傾向に影響を与えると考えられています。
例えば、他者の言動を過剰に否定的に解釈したり、自分の感情を適切に表現できなかったりするのは、内的作業モデルが関係している可能性があります。
心理臨床の現場では、トラウマ体験の再体験や逆転移を通して、クライエントの内的作業モデルが再現されることがあります。
そのため、セラピストとの関係を通じて、新しい関係体験を積み重ね、内的作業モデルの修正が促されることが治療の重要な目標の一つとされています。
内的作業モデルは、幼い頃の養育者との関わりを通して形成される「対人関係の中で自分がどう振る舞い、相手がどう応じるか」という、無意識に繰り返される関係パターンの脚本のようなものです。
一度形成されると、その後の人間関係でも繰り返されやすく、本人にとって「人とはこういうもの」「自分はこういう存在」といった信念として根付いていきます。
しかし、カウンセリングやセラピーなどで安全で信頼できる関係性を経験することで、これまでの脚本とは異なる体験が積み重なり、内的作業モデルが少しずつ柔軟に書き換えられていく可能性があります。
そのため、心理支援では「関係の中での気づき」と「新しい関係性の体験」がとても重要になります。



















