発達加速現象の定義
時代が進むにつれ、個体の生理学的・生物学的成熟が早まる現象を発達加速現象と言います。
身長や体重の増大という量的側面はもちろん、第2次性徴の低年齢化といった質的側面の変化も含まれます。
このように発達加速現象にはふたつの側面があり、量的側面が加速する現象を成長加速現象、初潮や精通などの性的成熟や質的変化の開始年齢が早期化する現象を成熟前傾現象と分けて呼ぶこともあります。
20世紀半ばから、世界的に顕著になってきている現象とされていますが、日本などの先進国では、近年やや加速度が低下してきているようです。
一方、急速に経済が発展している後進国においては、逆に加速度が高まっているとされています。
こうしたことから、発達加速現象は、個体の発達や成熟を規定する環境要因、例えば、生活条件の変化による栄養状態の改善、都市化や工業化などの刺激による神経生理学的な影響などが関係していると考えられています。
発達加速現象の関連キーワード
- 低年齢化
- 成長加速現象
- 成熟前傾現象
- 青年期の延長
発達加速現象の補足ポイント
発達加速現象は、臨床心理学を学ぶ上でも押さえておきたい用語の1つです。
まず、発達加速現象は、性的アイデンティティの危機に伴う摂食障害などの症状が生じる年齢の早期化を説明しうる要因の1つとして、臨床心理学でも重要視されています。
また、青年期・モラトリアムなどについて考える際にも、考慮に入れなくてはならないことの1つです。
例えば、発達加速現象により、青年期の始期が早期化していると考えられます。
その一方で、高学歴化により終期は遅延化しているため、青年期が以前よりも長期化してきているのです。この現象は青年期延長と呼ばれたりしています。
さらに、子どもたちの発達加速化現象の著しさなどから、知能検査などにおいても、検査問題が不適当な、時代と乖離したものとなってしまったために、改訂が行われたりもしています。
発達加速現象などにより生じる問題として、身体と精神とのアンバランスさが挙げられるでしょう。
これらのアンバランスさのために、性の問題、アイデンティティの問題などが増加することも考えられるのです。
心理学では、人の発達を年齢層ごとに区分した発達段階というものがいくつか提唱されています。
発達段階は幼児期、青年期、成人期、中年期などに分類されており、例えば青年期は12歳から20歳頃とするなど、目安となる年齢の範囲が設定されています。
しかし、発達の速度が変化したり、青年期延長が普遍的に見られたりするようになれば、青年期に該当する年齢を変更した方が適切であるというときもいずれ訪れるかもしれません。