成功不安の定義
自分が取り組んだことが成功するのは嬉しいことであり、どうせ何かをするなら成功を期待し、失敗はしたくない。
そんな風に考える人は多いのではないでしょうか。
しかしそうした考え方とは逆に、成功することを不安に感じたり、成功を避けようとする気持ちを感じる人も中にはいます。
1968年にホーナー,M.S.が、そうした気持ちについて成功不安や成功回避動機という概念として提唱しました。
当初ホーナーは、この成功不安を女性が抱く心理として概念化しました。女性は成功することでむしろ周囲から嫌われるのではないかと心配しやすく、成功不安という動機を発達させやすいと考察したのです。
成功不安の関連キーワード
- ホーナー,M.S.
- 達成動機
- アトキンソンのモデル
- 成功達成要求
- 失敗回避要求
成功不安の補足ポイント
成功不安という考え方が提唱されるまでは、最初に述べたような成功したいと思う達成動機や、失敗したくないと思う失敗回避動機についての研究が多くなされていました。
例えばアトキンソン,J.W.は、期待=価値理論と呼ばれるものの1つとして、アトキンソンのモデルと呼ばれるものを提唱しました。
そこでは、何かを達成しようという行動が生じるかどうかは、個人の要求の強さと、課題をどう捉えているかによって決まると想定されています。
人はみな成功達成要求と失敗回避要求を持っており、課題を前にした時に成功達成要求が失敗回避要求より強いと、その課題を乗り越えるべく挑戦していくのだと考えました。
しかし、この2つの要素だけでは説明がつかない動機があることが分かってきて、成功を回避する動機づけについての研究が行われるようになったのです。
具体的には、達成動機について調査をしても、女性の達成行動がうまく予測できないことが多かったようです。
ホーナーの調査によると、女性は成功しすぎると自分が女性らしさを失ったり、人から好かれなくなったり、社会から受け入れられなくなったりするのではないかと不安になり、何事もあまり成功しすぎないようにする傾向があったそうです。
そして、女性は成功や達成を望まないわけではないけれど、人から好かれたい欲求の方が強いと考察されました。
ただし、成功に関する女性の考え方や、女性に対する社会の受け止め方も、ホーナーの時代と現代とでは大きく変化してきています。
今では成功不安を抱くのは女性に限らないと考えられており、その後の追試研究では男性の中にも成功を恐れる気持ちを持つ人がいることが示されています。
近年では、男らしさ・女らしさや、性役割などに関する考え方も大きく変化してきています。
生物学的な性に対して、心理社会的な性を表すジェンダーという言葉も、かなり浸透してきました。
ジェンダーについての考えの枠組みをジェンダースキーマと言います。
男性とはこういうもの、女性とはこういうものという類型的な枠組みがあると、日常生活において情報処理をしやすくなり、自己概念を構築しやすくなります。
ただし、男性・女性だからこうあるべきだ、などと決めつけて考えることは偏見にもつながりかねないため、柔軟なジェンダースキーマを持つように意識することも大切です。