社会的促進の定義
社会的促進とは、作業や課題を遂行している時に、そばに他者がいることで、その作業や課題の成績が高まる現象を指す語です。
オルポート,F.H.は、単語連想課題や意見産出課題を用いて、単独で行う場合と集団で行う場合を比較し、後者の方が遂行量が多くなるということを実証しました。
同じ作業や課題を行っている他者が別にいることで、社会的促進がもたされることを、共行動効果(共行為効果)と言います。
また、後の研究において、単に他者がかたわらで見ているだけでも社会的促進を生じさせることが明らかになり、その効果を観客効果(見物効果)としました。
共行動効果も観客効果も、お互いの間で積極的な相互作用は行われていませんが、そこに他者が存在するということ自体が効果をもっているのです。
社会的促進の関連キーワード
- オルポート,F.H.
- 共行動効果(共行為効果)
- 観客効果(見物効果)
- 社会的抑制(社会的制止)
社会的促進の補足ポイント
社会的促進とは逆に、観察者や共行動者がいることで、作業や課題の遂行成績が低下する現象は社会的抑制(社会的制止)と呼ばれます。
誰かに見られているから遂行量が上がる、誰かに見られるから遂行量が落ちる、どちらもありえそうですが、他者の存在という要因は同じであるにもかかわらず、行動が促進されたり抑制されたりするのはなぜなのでしょう。
社会的促進と社会的抑制の原理について、最も一般的なものが、ザイアンス,R.B.による、ハルの動因理論に基づく説明です。
それによると、観察者や共行動者が存在するだけで、一般覚醒水準ないしは動因水準が高まり、優勢反応の生起確率が増大するために、そのときの作業や課題が簡単だったり、学習済みであったりした場合には、遂行行動の生起率が高まることで促進が起こり、作業や課題が複雑だったり未知のものだった場合には、遂行行動は低下し、抑制が起こるとされています。
また、評価懸念の重要性を指摘する声もあります。
評価懸念とは、他者によって自分あるいは自分の成績が評価されるのではないかという不安です。
自己評価が低い、作業のスキルレベルが低い場合には、抑制が起こりやすくなることでしょう。
さらに、動因を高める要因として、注意の散逸を挙げる研究者もいます。
近くに他者がいると、共行動者であれ観察者であれ、それに注意を向けずにはいられません。
作業に対して向けられた注意と、他者に対して向けられた注意との葛藤が、動因水準の上昇をもたらすという考えです。
社会的抑制の一種に社会的手抜きと呼ばれる現象があります。
グループで作業を行うと、他者を頼る気持ちがメンバーに生じたり、責任が分散されたりします。
そのため一人あたりの作業量が、個人で作業するときよりも低下することがあるのです。
グループのメンバー全員が常に最大限の力を発揮するとしたら、グループの人数が増えればその分生産性も上昇するはずですが、社会的手抜きなどが生じてしまい、実際にはそうならないことも多いものです。
グループ作業において集団生産性が低下する他の原因としては、メンバー同士でコミュニケーションを取る調整の手間が生じることなどが挙げられます。