ウェルビーイング

ウェルビーイング

ウェルビーイングの定義

ウェルビーイングとは、人が人生や生活全般を肯定的に捉え、満足した生活を送ることができている状態のことを言います。

WHOは健康について、単に疾病や障害がないことではなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であると述べており、この「良好な状態」が英語の原文では、ウェルビーイング(well-being)と表現されています。

また、厚生労働省は、個人の権利や自己実現が保障されていることもウェルビーイングの定義の中で挙げています。

ウェルビーイングの中には、人生や生活についての満足度、ハピネス、幸福感といった概念が含まれ、そして一時的ではなく持続的に満足を感じられる状態であることがウェルビーイングの特徴です。

 
学習性無力感の研究で有名なセリグマン, M.E.P.を中心に発展したポジティブ心理学においても、ウェルビーイングは重要な概念として位置づけられています。

ポジティブ心理学とは、人が充実した活動を行うことができる条件やプロセスについて研究する分野のことです。

20世紀後半の心理学では、人の弱さや病理などのネガティブな側面を扱う研究が主流となってきていましたが、もっと人の強さや美徳などのポジティブな側面にも目を向けることが大切であるとセリグマンは述べました。

ポジティブ心理学は、ネガティブな側面を研究することを批判するものではなく、特定の学派というよりは、ネガティブな面もポジティブな面もバランスよく研究することの重要性を強調する立場や姿勢を表すものと言えるでしょう。

ウェルビーイングの関連キーワード

  1. ポジティブ心理学
  2. ウェルフェア
  3. 平等
  4. 公平
  5. ノーマライゼーション
  6. インテグレーション
  7. インクルージョン

ウェルビーイングの補足ポイント

ウェルビーイングと関連する用語に、ウェルフェアがあります。
ウェルフェアは、社会的に弱い立場にある人々や貧困状態にある人々を救済し、保護を提供すべきであるとする概念です。

それに対してウェルビーイングは、社会的弱者に限らず、すべての人々の権利を尊重し、全員が自己実現できる社会を保証しようと考える概念です。

ウェルフェアは、困っている人を助けるための概念ですが、社会的弱者に注目することで、かえって社会的弱者という概念を生み出している側面があるという指摘があります。

またウェルフェアは、主に国家が主導するものであり、困ったことがあれば福祉サービスが提供されるというのは良い面ですが、サービスの受け手が受動的になりやすい面があります。
しかし、ウェルビーイングは、各人がどのような福祉サービスを受けるかを自ら選択し、自分らしい生活を実現できることを支援するという点で、サービスの受け手も能動的になれることを重視しています。

これまでは福祉においてウェルフェアが重視されてきましたが、近年ではウェルビーイングが重視されるように変わってきています。

 
ウェルビーイングについて考えるにあたっては、福祉領域で使用されるその他の用語についても理解を深めておくことが役立ちます。

例えば、平等と公平という概念があります。
この2つはよく似た概念ですが、違いを覚えておきましょう。

平等とは全員が等しいことを表し、平等な支援を提供するという場合、個別の状況の違いは考慮せず、全員に同じ支援を提供することを意味します。

公平とは、ひいきをしたりせず、判断や行動が偏っていないことを表し、公平な支援を提供するという場合、一人ひとりに適切な質・量の支援を提供することを意味します。

例を挙げると、子どもたちが動物園にやってきて動物を見たいと思ったけれど、仕切りの壁が高いので子どもたちからは動物がよく見えなかったとします。
その際、全員に30 cmの踏み台を渡したところ、比較的背が高い子どもは動物が見えましたが、背が低い子どもはそれでも動物が見えません。
そこで、背が低い子どもには60 cmの踏み台を渡すと、その子も動物を見ることができました。前者は平等な支援であり、後者は公平な支援だと言えるでしょう。

 
その他の関連用語として、ノーマライゼーション、インテグレーション(統合)、インクルージョン(包括)があります。

ノーマライゼーションとは、障害者や高齢者などの福祉サービスの対象者が差別を受けることなく、それ以外の人と共に、共通の場において同じように生活を送ることが望ましいとする思想や運動のことです。
バリアフリーやユニバーサル・デザインという概念は、この考え方に基づいています。

インテグレーションは、ノーマライゼーションを実現するために、障害の有無などを区別した上で、福祉サービスの対象者がそれ以外の人の中に入っていけるように援助することです。

その一方、インクルージョンとは、ノーマライゼーションを実現するために、障害者や社会的弱者といったラベル貼りをせず、すべての人々が支え合って生活できる社会システムを構築していくことです。

MEMO

セリグマンは、ウェルビーイングを測定する5つの構成要素を提唱しました。

それらはポジティブ感情(positive emotion)、エンゲージメント(engagement)、関係性(relationship)、意味と目的(meaning and purpose)、そして達成(achievement)であり、英語の頭文字を取ってPERMAと略称されます。