強迫症

強迫性障害

強迫症の定義

強迫症は、日常生活に支障をきたすほど、強迫観念強迫行為が持続する精神疾患の一種で、国際的診断基準の1つであるDSM-5-TRでは、「強迫症及び関連症群」の中に位置づけられています。

「家の鍵をかけたか心配で確認しに戻る」
「汚れが落ちていない気がして何度か手を洗う」

こういったことは私たちも時には経験することではないでしょうか。

しかしこうした不安感があまりに強く頻繁に生じ、出勤前に家と駅を10回も往復してしまったり、1日に50回も手を洗うなどとなると、日々の暮らしや仕事、学校生活などにも支障が出てきます。

上記の1番目の例で言うと、「家の鍵をかけていないのではないか」という考えが強迫観念であり、その観念に基づいて「何度も確認しに戻る」のが強迫行為です。

強迫症の人は、自分が抱いている不安感や、何かをしなくてはならないという切迫感について頭では「そこまで考えなくても大丈夫だろう」とは思いつつ、それでも確認をしたり、手洗いを反復したりしてしまい、困っています。

強迫症の関連キーワード

  1. 強迫観念
  2. 強迫行為
  3. 強迫症及び関連症群
  4. 行動療法
  5. 薬物療法

強迫症の補足ポイント

代表的な強迫観念には不潔恐怖や加害恐怖が、強迫行為には洗浄強迫や確認強迫があります。

その他に儀式行為、数字へのこだわり、正確さや対称性、順序へのこだわりなどがよく見られます。

不潔恐怖があると、汚いと感じるものを極端に恐れて避けたり、過剰に掃除や手洗いを行う洗浄強迫などの行為が見られます。

加害恐怖は、実際には何もしていないのに誰かに怪我をさせたのではないかと不安になり、人に確認したり、ニュースで事件になっていないかを確認したりします。
さまざまな不安から何度も確認してしまう確認強迫は、加害恐怖に限らず強迫症でよく見られる症状です。

儀式行為は、決まった手順でいつもと同じように作業をしないと悪いことが起きるような気がしてしまい、一定の手順を崩さずにあらゆることを行うことを指します。

数字へのこだわりは、特定の数字について不吉な意味づけをするといった形で見られます。
強迫症の場合、げんを担ぐという次元をこえて、特定の数字を選択・回避することに固執します。

正確さや対称性、順序へのこだわりが見られる場合、そうした秩序が守られていないと不安や恐怖を強く感じます。

 
強迫症の治療は、行動療法薬物療法が有効であると言われています。
行動療法では、エクスポージャー、反応妨害法などが用いられ、薬物療法では、抗うつ薬であるクロミプラミンやフルボキサミンマレイン酸塩などが用いられます。

なお強迫症を発症しやすい病前性格には特定のものは見出されておらず、強迫性パーソナリティ症との関連も特に見られないと言われています。

MEMO

強迫症の人は何らかの事柄について極めて強い不安や恐怖感を抱えています。
周囲の人から見ると「そこまで心配しなくていいのに」と思えてしまい、妄想を抱いているかのように思われることもあるかもしれません。

統合失調症の人は、例えば「完全に滅菌しないと身体が乗っ取られる」といった妄想を訴えることがあるかもしれませんが、その考えを確信しており、自分がおかしなことを考えているとはまったく思っていません。

この点について、強迫症の人は自分でも強迫観念が不合理だと頭ではわかっていることが特徴であり、統合失調症などの妄想と強迫観念は性質が異なります。

強迫症の人も統合失調症の人もどちらも、ありえないことを言っていると周囲に感じられたり、「そんなことは起きない」と何度伝えても納得しないように見えたりすることがあります。
しかし、強迫症の人は基本的には現実検討力が保たれており、病識があるという点で統合失調症とは区別されます。