恐怖症

恐怖症

恐怖症の定義

恐怖症とは、一定の対象や状況に対して、実際に想定される危険性とは釣り合わないほど、強い恐れや不安を抱く精神疾患のことです。

恐怖症のクライエントは、多くの人があまり恐怖を感じないような対象や状況に対して強い恐怖を感じます。
その恐怖が、不適切で不合理であるということは、本人も認識しているものの、どうして恐怖を感じるのかという原因については理解できていないことがほとんどです。

恐怖を抱く対象によっていくつかの恐怖症があり、それらはDSM-5-TRでは主として「不安症群」に分類されています。
「不安症群」に含まれる恐怖症には、限局性恐怖症と広場恐怖症があります。

 
限局性恐怖症は、動物や高所など特定の対象や状況に対して強い不安や恐怖を示します。
広場恐怖症は、公共交通機関の利用時、広い場所や囲まれた場所、群衆の中にいる時などに強い不安や恐怖を示します。

恐怖症の治療においては、薬物療法の他、系統的脱感作法やエクスポージャーなどの行動療法、イメージ療法などが有効とされています。

恐怖症の関連キーワード

  1. 限局性恐怖症
  2. 広場恐怖症
  3. 社交不安症
  4. 対人恐怖症
  5. 自己臭関係付け症
  6. 身体醜形症(醜貌恐怖)
  7. 赤面恐怖
  8. 視線恐怖

恐怖症の補足ポイント

DSM-5-TRの社交不安症は、他者から注目される可能性がある場面で強い不安や恐怖を感じる疾患です。
そして、人前での自分の振る舞いや、不安症状を見せることが否定的な評価を受けることになるのではないかと恐れるため、恐怖症と深く関連しています。

実際に社交不安症は、以前は社交不安障害(社交恐怖)という名称であったこともあり、いわゆる対人恐怖症と近いものですが、対人恐怖症の方が、DSM-5-TRの社交不安症よりも少し広い概念だと考えられています。

対人恐怖症は、DSM-5-TRでは独立した診断名としては記載されていませんが、日本文化圏に見られる症候群として言及されています。

対人恐怖症は、人付き合いに極端に敏感で不安を感じる「敏感型」と、相手を不快にさせることに大きな不安を感じる「攻撃型」に分類されます。

また、その変異型として、自己臭恐怖、醜貌恐怖、赤面恐怖、自己視線恐怖などがあります。
上記のうち、自己臭恐怖と醜貌恐怖は、DSM-5-TRの診断基準にも対応する疾患の記載があります。

自己臭恐怖は、DSM-5-TRでは「自己臭関係付け症(自己臭関係付け症候群)」として、「強迫症及び関連症群」の中で言及されています。

自己臭関係付け症は、他人には気づかれないか、わずかに気づく程度の悪臭を自分が発しているという信念を抱き、過度にシャワーを浴びたり、臭いを誤魔化そうとしたりします。

本来、体臭、口臭は少なからず誰にでもあるものですが、自己臭関係付け症の人はこれを過度に気に病み、気にする必要のない臭いが気になってしまうのです。

醜貌恐怖は、DSM-5-TRの「強迫症及び関連症群」に分類されている身体醜形症に類似しており、身体醜形症の診断基準を完全には満たさないときに適用されます。
身体醜形症醜貌恐怖は、他人には認識できないか、できたとしても些細な外見上の欠点にとらわれ、過剰に鏡を見たり身繕いをしたりするなどの特徴を示します。

 
DSM-IV-TRでは「不安障害」という1つのカテゴリーの中に、広場恐怖症などの恐怖症、パニック発作、強迫症などのさまざまな疾患が含められていましたが、DSM-5-TRでは不安症群と強迫症群は異なるカテゴリーとして整備されています。

その過程で、従来恐怖症と分類されてきた疾患も、DSM-5-TRでは各恐怖症の特徴に応じたカテゴリーに振り分けられています。

MEMO

対人恐怖症に含まれる赤面恐怖は、人前で顔が紅潮することを強く恐れます。
そして赤面を自覚すると、そのことがさらに赤面を助長するという悪循環に陥ります。

視線恐怖には、他者に視線を向けられることへの恐怖と、自分の視線が相手に不快感を与えることへの恐怖の2種類があり、どちらも対人場面の回避につながります。

後者の自己視線恐怖では、視線を合わせすぎるか、逆に少ししか合わせないといった特徴が見られます。