レジリエンス

レジリエンス

レジリエンスの定義

レジリエンスとは、弾力性、回復力、耐久性、元の状態に戻る力や性質といった意味を持つ言葉です。
これは脆弱性の反対の概念であり、脆弱性とは、感情的苦痛に対する感受性の強さを意味し、病気へのかかりやすさや不適応に陥りやすい程度を表します。

レジリエンスは、元々はストレスと同じく物理学の用語でしたが、困難な状況を経験して傷ついても立ち直る力強さという意味で、心理学でも使われるようになりました。

大きな事故や災害などの外傷的な出来事を経験した人には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が生じたり、診断に至るほどではなかったとしても、慢性的な抑うつなどが生じたりする場合もあります。
しかし、必ずしも全員がそういった不適応状態に陥るわけではありません。
無理に明るく振る舞っているということでもなく、困難な経験を糧にして力強く過ごしていく人たちもいるのです。

そうした逆境に負けない人たちに共通する特性を表す概念として、レジリエンスが注目されています。

私たちの日常を脅かすような要因は危険因子と呼ばれ、危機や困難から回復するためのレジリエンスを高める要因は保護因子と呼ばれます。
保護因子には、パーソナリティなどの個人要因や、サポートしてくれる人などの環境要因が含まれます。

また、レジリエンスは、身体的健康、楽観性、社交性といった資質的レジリエンス要因と、問題解決志向、自己理解、他者心理の理解といった獲得的レジリエンス要因に分類でき、後者は後天的に身につけやすい特性であると言われています。

 
レジリエンスの類似概念に、ハーディネスやストレス耐性があり、これらはレジリエンスを高める要因の1つと考えられています。

ハーディネスは、困難な状況でも傷つかない頑健性や、困難に対して前向きに挑戦し、課題の統制を試みる力強さを示す概念です。
そして、ストレス耐性は、人が危険因子などのストレッサーに曝されたときに、その性質や程度を的確に認知し、負荷に耐えながら対処できる力を表す概念です。

この2つはどちらかというと逆境に負けない、動じないといった側面に注目した概念とも言えますが、それに対してレジリエンスは、傷ついたり不適応的な状態に陥ったりしても、そこから立ち直るしなやかな力という側面に注目した概念です。

レジリエンスの関連キーワード

  1. 弾力性
  2. 脆弱性
  3. 危険因子
  4. 保護因子
  5. 資質的レジリエンス
  6. 獲得的レジリエンス
  7. ハーディネス
  8. ストレス耐性

レジリエンスの補足ポイント

事故や災害といった特別な状況を乗り越えることに限らず、レジリエンスは、日常生活を円滑に送ることにも役立つ力です。

例えば、日常生活では仕事と家事を両立させる、職場の苦手な同僚や上司とも付き合っていく、子どもの世話や親の介護をするなど、日々の課題が意外と多くあるものです。
そうした日々を、毎日やることが多くて大変だと感じる人もいる一方で、課題をクリアしていく楽しみがあると感じる人もいます。

 
その両者を分ける要因の1つがレジリエンスです。
レジリエンスが高い人の特徴として、ハーディネスやストレス耐性を備えていること、問題解決や感情調整をする能力、コミュニケーション能力が高いこと、肯定的未来を志向する傾向などが挙げられます。

これらの特徴を踏まえると、忍耐強く問題解決に取り組み、感情に翻弄されず、適切に周囲の人の力を借りながら、現在の経験が将来にどう役立つかをイメージしながら日々の生活を送れる人は、困難が生じても比較的上手く乗り越えることができそうです。

上記のような特徴をすべて備えている人は多くはないかもしれませんが、後天的に身につきやすい獲得的レジリエンス要因を高めることを意識していくと、日常を豊かにすることにつながるでしょう。

MEMO

レジリエンスを高める保護因子に含まれる環境要因の中で、一番身近な存在は本人の家族です。
家族から愛情を受けていると感じ、家に帰れば安心できると思えれば、困難な状況を乗り越える力も湧いてきやすいものです。

家族はむしろ苦手で家だとくつろげないという人もいるかと思いますが、他の環境要因としては、友人、学校の先生、近隣の人などが挙げられます。

こうした人たちからのソーシャル・サポートも、レジリエンスを高めてくれる重要な要素です。