ステレオタイプ

ステレオタイプ

ステレオタイプの定義

ある他者がどのような人物か考える際、人は性別や人種、職業などのイメージから判断してしまうことがあります。

このように、理解したい対象に当てはめて考える、典型的で固定化されたイメージのことをステレオタイプといいます。

つまり、ステレオタイプとは、その文化や社会において人々に広く共有されているカテゴリーです。

 
簡単な例を挙げれば、「A型は几帳面」「教師はまじめ」などといったものがこれにあたります。

このような、ステレオタイプを用いた認知を、ステレオタイプ的認知と呼びます。

多くの場合、対象を非常に単純化・画一化された形で理解するため、その対象が本来持っている特質や独自性から認知がずれる可能性があります。

その結果として、対象が持つ多様な面を理解しないまま、否定的な方向に偏った評価や感情と結びついて、偏見や差別を作り出すなど、対人認知が歪められることもしばしば生じ得るのです。

ステレオタイプの関連キーワード

  1. ステレオタイプ的認知
  2. 偏見
  3. 対人認知
  4. 認知の歪み

ステレオタイプの補足ポイント

ステレオタイプ的認知は、常に変化し完全に把握することが難しい現実を、ある一定のパターンにより整理して理解し、また、その後の変化を速やかに予測し、対応することを可能にするという利点もあります。
環境に対して適応的な行動をとっていくために不可欠な認知でもあるのです。

しかし、ネガティブな印象を伴うステレオタイプは、時に偏見や差別を生み出す危険もあります。

 
また、そのようなステレオタイプは認知療法などにおけるターゲットとしても取り上げられる概念です。

人間は世界のありのままを観ているのではなく、一部を抽出し、解釈し、帰属させているなどして認知しているため、必ず個人差があり、主観的と言えます。

それゆえ、誤解や思い込み、拡大解釈などを含んだ不都合な認知をしてしまうことがあり、結果として、怒りや悲しみ、抑うつなどが生じてくると、認知療法では仮定します。

これらのステレオタイプな認知は、認知の歪みと捉えられ、それを修正することが認知療法の目標とされるのです。

 
ステレオタイプは、経験の積み重ね以外にも、情報が得られるだけで形成・強化されていく場合があります。

つまり、あるステレオタイプ的信念を自分では信じていないつもりでも、そのような相手と遭遇した際、無意識な部分で、ステレオタイプ情報が活性化することになります。

このように、ステレオタイプは無意識的に生じることも多いため、この点に自覚的になることが重要なのです。

MEMO

フィスク, S. T.らは、ステレオタイプ内容モデルを提唱しました。

このモデルでは、ステレオタイプは能力の次元と、人柄の次元に分類され、また、多くのステレオタイプには肯定的な面と否定的な面という両方の特性があると考えられています。

この能力・人柄の次元と、肯定的・否定的な面をかけ合わせると、「有能だが冷たい」「無能だが温かい」「有能で温かい」「無能で冷たい」という4パターンのステレオタイプに分けられます。

上記のうち最初の2つは、両面価値的で相補的な特徴を有していいます。
したがって、一概に他者を否定的に捉えるものではないため、外集団に対するステレオタイプとして用いられやすいと考えられています。