自律訓練法の定義
自律訓練法とは、自己催眠を用いたリラックスにより、心身の健康を目指す心理療法で、シュルツ,J.H.が開発しました。
「標準練習」「特殊練習」「黙想練習」という練習段階からなり、練習が高度に体系化されているのが特徴です。
まず、基本となるのが標準練習です。
標準練習の公式は、催眠状態におけるリラックスの主観的側面を自己暗示文の形式で公式化したもので、背景公式と6つの訓練公式から構成されます。
これを唱えながら、公式に示されている心身の状態を作り出すよう、自己誘導していくのです。
具体的な手順は以下の通りです。
まず「背景公式」として安静練習、第1公式が四肢重感練習、第2公式が四肢温感練習、第3公式が心臓調整練習、第4公式が呼吸調整練習、第5公式が腹部温感練習、第6公式が額部涼感練習となります。
標準練習で得られたリラックス状態は「自律状態」と呼ばれ、これが得られるようになると、症状に合わせた特殊練習や自律状態を活用する黙想練習へと進みます。
自律訓練法の関連キーワード
- シュルツ,J.H.
- 自己催眠(自己暗示)
- リラックス
- 言語公式
- 受動的注意集中
自律訓練法の補足ポイント
自律訓練法は、催眠そのものではありません。
催眠の研究から出発はしていますが、その目的は催眠状態を作り出すことではなく、心身の機能の再調整をし、心の再体制化をはかるところにあります。
そこで重要となるのが受動的注意集中です。
暗示に集中しようと、一生懸命、能動的に公式を繰り返すのではなく、周りの刺激に影響されず、ゆったりした気持ちで自然に暗示内容の状態が生じてくるのを待つことが、自律訓練法では大事なのです。
さて、この自律訓練法における心理学的効果には、短期的効果と長期的効果があります。
短期的効果としては、緊張・不安・怒り・抑うつなどの減少、活気や爽快感の増加などが挙げられます。
長期的効果としては、心身の変化の気づきの増大、対人関係の安定、ストレス耐性の増大、自律神経機能の安定などが挙げられます。
なお、自律訓練法の適用が禁忌とされている患者もいるので、注意が必要です。
具体的には、心筋梗塞の患者、低血糖発作の可能性のある患者、糖尿病患者で、身体症状への監視が困難な状況にある人、また、統合失調症の陽性反応の見られる患者などがそれに当たります。
また、緑内障の患者や甲状腺機能亢進症の患者、強い抑うつ状態にある人にも注意が必要とされています。
自律訓練法を用いる際には、練習中に血圧が上昇したり、練習後に不安が増大したりすることはないか確認し、そうした場合には慎重に指導を行う必要があると言えるでしょう。
自律訓練法は自律神経をコントロールして、心身のリラックスをはかる方法です。四肢を弛緩させる言語公式を数回唱えて、意識を集中していくことで、緊張した状態からリラックスした状態に移行することができます。