汎適応症候群の定義
汎適応症候群とは、セリエ,H.が提唱した、ストレッサーが引き起こす身体の非特異的反応のことです。
ストレッサーとは、ストレス反応を引き起こす刺激のことです。
セリエ,H.は、生体がストレッサーに晒され続けると、そのストレッサーの種類にかかわらず、共通していくつかの異変が見られることを発見したのです。
発症まで、以下の経過がたどられます。
まず、警告期です。
この時期は、適応のための態勢を整える時期です。一時的に身体の反応性が低下するショック相と、それを脱するために生理学的覚醒状態を作り出し、抵抗するための準備を行う反ショック相からなります。
次に、抵抗期です。
ストレッサーに対する抵抗としての運動反応が生起し、ストレッサーが除去されたり、その環境に適応できるまで維持される時期です。
最後が、疲はい期です。
さらにストレッサーが長時間持続すると、抵抗力は再び低下し、生体がストレッサーに負けると障害が生じることとなります。
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汎適応症候群の補足ポイント
汎適応症候群の発症までの経過について、もう少し具体的に見ていきましょう。
警告期のショック相では、脾臓・リンパ腺・肝臓の萎縮、脂肪組織の消失、胸腺及び腹膜後ろの組織の浮腫、体温の低下、消化器官、特に胃、小腸、盲腸の激しいただれ、大脳皮質性の複合脂質の減少などが起こります。
反ショック相では、副腎皮質の肥大、脂肪細胞の回復、浮腫の消失など、抵抗力が強まってくる時期です。
ここで少量の薬物投与をしたり、または比較的症状が軽い場合、この時期に各機能が回復に向かうようになるのです。
抵抗期は、抵抗力が高まり、ストレス刺激と均衡が取れている時期で、生体の反応は比較的安定するものの、さらに続く場合、1~3ヶ月後に生体は抵抗力を失うこととなります。
疲はい期は、長期にわたるストレス状態に適応し続けることができず抵抗力を失い、最初の警告期のような症状を見せ、各ダメージや異変の発症、さらに放っておくと死に至る危険が生じます。
セリエのストレス学説は生理学的なストレスのメカニズムに焦点が当てられており、心理学的要因についてはほとんど考慮されていませんでした。
しかし、その後の研究で、心理学的要因が重要であることが報告され、現在「心理学的ストレス」の定義として支持されているのは、ラザルス,R.S.の定義です。
ラザルスの理論は、「ストレッサーがストレス反応を引き起こす」という一方向的な従来のモデルに対し、「環境と人間は双方向に影響を及ぼし、この過程が賦活している状態がストレス状態である」とした点が、非常に独創的なもので、その後のストレス研究に大きな影響を及ぼしています。
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