レディネスの定義
レディネスとは、もともと学習、つまりS-Rの連合を効果的に成立させるための必要条件として、神経生理学的な成熟が準備されている状態を指す概念として用いられていました。
しかし、現在は、高次の精神機能に関わる教育的作用も含め、神経生理学的な成熟のみならず、学習が効果的に作用するために必要なすべての発達が準備されている状態を指すことが多くなっています。
レディネスの要因は2つに大別されます。
1つは個々人の一般的発達水準であり、もう1つはその課題を学習するための前提となる知識や技能がすでに習得されているか否かという要因です。
レディネスは成熟優位説に基づいています。
成熟優位説は、学習優位説を批判するために、ゲゼル,A.L.が提唱したもので、この立場によれば、レディネスが成立してからの教育の重要性が指摘されています。
レディネスの関連キーワード
- 学習
- ゲゼル,A.L.
- 学習優位説
- 成熟優位説
- 発達の最近接領域
レディネスの補足ポイント
成熟優位説と学習優位説について確認しておきましょう。
まず、学習優位説は、「環境説」「経験説」とも呼ばれるもので、人間の諸形質は環境の影響を受けながら形成されるとするものです。
この立場として有名なワトソン,J.B.は、生まれた後の環境でどのようにでもなると主張しました。
これに対する立場なのが、成熟優位説です。
「遺伝説」「生得説」とも呼ばれるように、人間の諸形質は生まれつき内在する遺伝的なものが自律的に発現したものであるとする考え方です。
この立場であるゲゼル,A.L.は、双生児の研究から、訓練は早ければ良いというわけではなく、適した成熟期があり、そこに達していることが必要であるとし、そこからレディネスの概念が生まれました。
しかし、レディネスという概念にはさまざまな批判もあり、レディネス研究は多くの論争をはらみつつ今日に至っています。
レディネスは学習の前提条件とされているものの、同時に学習によって形成される場合も少なくありません。
その上、レディネスさえ成立すれば、その後はどんな年齢でも効率的に学習が可能となるというわけではなく、子供の発達過程にはそれぞれ学習するにふさわしい最適期というものが存在するのです。
そこで、レディネスの概念の中に、その学習可能性と学習適時性という視点を取り入れる必要性が強調されるようになってきているようです。
近年は、ヴィゴツキー,L.S.の発達の最近接領域という概念に見られるように、思考や認知といった高次の精神機能の学習においては、レディネスが成立してからの学習ではなく、レディネスを作り出し促進するための学習が重要だと指摘されています。
学習したことが身につくにはレディネスが必要であるという考えに基づくと、レディネスが成立していない段階で子どもに何かを教えようとしても、学習の効率は上がりません。
そのため、英才教育や早期教育も、時期があまりに早すぎると意味がないと考えられます。
しかし、教材を整えるなどして学習環境を整えたり、動機づけを高めたりすることによって、レディネスの成立を促進させることができるとも言われています。