学習障害

学習障害

学習障害の定義

学習障害(Learning disorder:LD)とは、知能の全般的な発達は正常の範囲であるにもかかわらず、聞く、話す、読む、書く、推理する、あるいは計算などの算数の諸能力の特定の領域について、その習得と使用に著しい困難を示す児童を総称する概念です。

 
原因としては、中枢神経系に何らかの機能障害が推定されると言われており、視覚障害や聴力障害、情緒障害、不適切な指導などの環境要因は直接の原因ではないとされています。

先天的な発達性の障害のため、学童期など比較的発達の早期に顕在化し、基本的には大人になってからも持続するものですが、困難の範囲や重症度、併存する症状、適切な支援の有無によって、その経過はさまざまです。

出現率としては、米国では4~5%、日本ではやや少なく2~4%程度であり、男女比では男児が圧倒的に多いということがわかっています。

 
学習障害という用語は、元々1960年代ごろから米国を中心に広く使われだした教育用語ですが、教育領域だけでなく、医学や心理学などの近接領域でも広く用いられています。

医学的な診断名として、かつて微細脳機能障害と呼ばれたこともありましたが、現在では精神疾患や発達障害の診断マニュアルとして広く知られている、アメリカ精神医学会による「精神障害の診断と統計マニュアル」の最新版であるDSM-5で、「限局性学習症/限局性学習障害」という用語が採用されています。

この名称には、全般的な知的障害や、環境要因による一般的な学習困難と明確に区別する意図が含まれていると言えるでしょう。なお、学習障害の下位分類としては、読字障害、書字障害、算数障害などさまざまにありますが、学習障害の中でも特に多いとされる読字障害は、「ディスクレシア」と呼ばれることもあります。

 
学習障害と関連の深い障害としては、DSM-5において、学習障害と同じく神経発達症群に分類される自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)が挙げられます。
学習障害が見られる児童に、ADHDの特徴である多動性や注意集中の困難が見られたり、ASDの特徴であるこだわりの強さが見られたりすることも少なくありません。
これらの名称は概念上区別がされていますが、明確に線を引けるものではなく、実際上はそれらが重なりあって現れてくると考えられます。

学習障害の関連キーワード

  1. 中枢神経系の機能障害
  2. DSM-5
  3. 限局性学習障害
  4. 自閉症スペクトラム障害
  5. 注意欠如・多動性障害

学習障害の補足ポイント

冒頭に挙げたように、学習障害では、学習に関わるさまざまな側面で特異的に困難が生じるため、その様相は個々によって異なります。ここでは、それぞれの障害が具体的にどのような困難があるのかを紹介していきます。

学習障害で多くみられる読字障害は、書かれた文章を読むことに関する障害です。
例えば、文章を読む際に単語をひと塊として認識できずに一文字一文字読んでしまう、「あ」と「お」などの形態の似た文字を認識できない、「っ」「ゃ」などの小さい文字を認識できない、不自然な飛ばし読みをしてしまう、などの特徴が見られます。
これらの特徴により、文章を読むことに非常に時間がかかったり、過度に疲弊してしまったりします。

書字障害は、自分で文字を書いたり、見た文字を書き写したりする能力の障害で、読字障害とも関連します。例えば、文章を書く際に誤字脱字が非常に多い、書き順の間違いが多い、文字の大きさがバラバラになったり形が不適切になったりする、などが挙げられます。学校では、黒板の字をノートに書き写すなどの作業に困難が生じます。

算数障害では、数字に関する能力や、数学的な推論の能力に困難が見られます。具体的には、基本的な数字や記号の意味を理解しにくい、数の大小の理解が困難、計算の繰り上がりや繰り下げができない、図形やグラフの理解ができない、などが挙げられます。

読字障害や書字障害が関係することもありますが、読み書きに問題がなくても算数障害のみが生じることもあり、その場合は学習障害として周囲に認識されにくい傾向にあります。

MEMO

上述したような学習障害のそれぞれの特徴は、特定の領域のみに問題が見られることもあれば、複数の領域にわたって困難を来す場合もあり、その個人の特徴に沿った支援を行うことが重要となります。

また、支援にあたっては、学習障害があることで2次的に生じる、集団への不適応や自信の喪失などに目を向けることも大切です。